3Dバイオプリンターとは、マイクロレベルの高解像度で3次元構造物を作製できる機械です。2次元の印刷物を積層することで3次元構造物を作製することが可能です。我々はインクジェットプリンターが細胞と同程度の液滴を吐出していることに着目し、装置を開発しました。通常のインクの代わりに細胞や生体適合性材料を印刷することで、組織構造を作製します。また、複数の材料を任意のデザインに印刷できるので、複雑な構造の作製が可能です。この研究テーマでは、3Dプリンターを用いて、立体的で複雑な組織様構造物の作製を目指します。
これがバイオプリンターです。 ここから細胞を打ち出します。
灌流培養とは生体外で細胞や組織を培養する際に培養液などを循環させ培養する方法です。生体外へ取り出した組織や臓器は血液が循環しなくなるため、組織の維持に必要な栄養素や酸素の供給を人工的に行う必要があります。当研究室ではこの灌流培養法を利用して疾患などで機能が低下した臓器を生体外で治療し、機能回復後に生体に再び戻すことでドナー不足などの移植医療が抱える問題を解決できると考え、取り組んでいます。さらには、細胞から生体外で組織を作製する際にも灌流培養が重要であり、再生医療の技術開発への貢献も目指しています。
これが灌流装置です。 糸球体の電子顕微鏡画像です。
私たちは微粒子作製技術として「インクジェットドライ法」を開発しました。これはインクジェット技術の「均一な液滴を吐出可能」「微量インクを吐出可能」及び「非接触印刷が可能」という特徴を利用し、吐出した液滴を空気中で乾燥させることで乾燥微粒子を作製する方法です。この方法は「熱に弱い試薬の高濃度粒子化」「簡便な粒子サイズの制御」など様々な利点があり、また作製した粒子径も均一性があります。これらの特徴から、この技術を用いて生体適合性のある物質で様々な微粒子を作製することに成功しています。現在は人工酸素運搬体やマイクロサイズの酸素センサーなどの開発に向けた研究を行っています。
微粒子の顕微鏡画像です。 こちらは電子顕微鏡画像です。
私達の研究室では組織特有の微細かつ複合的な3次元構造を再現する技術として、バイオアセンブリングに着目をしています。組織パーツなる組織構築用の微小なビルディングユニットを予め作製し、ユニットを集積化することで複雑な3次元組織を作製することが可能です。とりわけ、細胞をマイクロサイズの細長い紐状に加工した細胞ファイバーに焦点を当て、再生医療、組織工学へ応用すべく検討を行っています。私たちは種々な方法によって、生体材料で構成されたマイクロファイバーを作製し、それらを組み合わせることで細胞の配置や配向性の制御がされた組織の作製を試み、研究を行っています。
これが作製したファイバーです。 断面の蛍光顕微鏡画像です。
現在、再生医療の発展により、人工的に人体の組織や臓器を作製することが可能になりつつあります。しかし、作製された組織、臓器の長期保存法が確立されていないことが問題点としてあげられています。この問題を解決するために、私達の研究室では組織凍結保存時における氷晶形成による細胞へのダメージに着目をしています。そこで、当研究室では高速度ビデオカメラを用いた凍結現象の可視化を行っています。細胞内外の氷晶形成を観察し、凍結過程における細胞損傷のメカニズムを解明することができれば、ダメージを最小限に抑える凍結保護剤の探索や凍結・解凍方法を開発していくことが可能になります。将来的には、組織や臓器の長期保存法を確立することを目的としています。